ログイン小説情報感想レビュー縦書きPDF表示調整進化の実 ~ 知らないうちに勝ち組人生 ~ 作者:美紅<< 前の話次の話 >>40/75ルルネ無双お待たせしてすみません。では、どうぞ。 司会の言葉に従い、それぞれの参加者がスタートラインまで移動を開始した。 この王都カップでは、地球で言う駅伝のようなスタートの形が採用されている。 なので、最初のスタートの位置からすでに、レースの有利、不利が出てしまうのだ。 これは、参加者が多いため、仕方がないだろう。 それに、そのことに関しては、参加者たちも了承済みなので、文句は出ないらしい。 他の参加者の馬が大きく、ロバに跨る俺は、どうしても小さくなってしまう。 だから、残念ながら俺は、スタートの位置で必然的に不利な、一番後ろになってしまった。「ふぅ... 一番後ろからスタートなのは仕方がないとして... 案外乗れるもんだな」 そこまでレースにこだわっているわけでもない俺は、ルルネの背中に簡単にのり、ちゃんと移動できていることに軽く感動していた。 進化前の俺だったら、まずルルネの背中に乗ることすらできなかっただろうなぁ... 。 そんなことを考えていると、ふとある馬に乗っている集団が目に映った。 その集団は、なぜかスタートラインまで移動しておらず、その場から動かない。 司会もそのことに気付いたのか、声をかける。『おっとぉ ~? そこの選手諸君! 一体どうしたんですか? 』 だが、声をかけられている人たちは、必死に自分の馬に声をかけていたため、司会の声が届いていなかった。「おい、ジョンソン! どうした? 」「何で動かねぇんだよ、ケリー. 」「ジョニー、動いてくれよ. 」 やけに人間っぽい名前を馬に付けるんだな。 ツッコミどころはそこじゃないんだろうが、思わずそう感じてしまった。 しかし... 本当にどうしたんだろうか? 馬が突然動かなくなることなんてあるのか? その人たちの様子を見て、いろいろと可能性を考えてみたが、馬に特別詳しいわけでもない俺には、まったく分からなかった。 俺は、なんとなく彼らが乗っていた馬に視線を向けた。「ッ!? 」 そして、俺はこの騒ぎの原因を理解してしまった。 その原因を理解して、俺が驚いていると、とうとうその動かなくなった馬に乗っていた選手たちは、馬からおり、動かない馬に語り掛けている。「本当にどうしたんだ...? 」「どこか具合でも悪いのか? 」「無理させてまで走らせられねょ... 」 それぞれが、馬を気遣いながら、首を撫でたときだった。 ドサッ。 突然、その馬すべてが地面に倒れた。 しかも、よく見てみれば、そのすべてが無駄に凛々しい表情を浮かべたままだ。 お分かりいただけただろうか? つまり、突然動かなくなったこの馬たちとは―――。「「「…… あ。 死んでやがる」」」 ウマシカあああああああああああっ! またお前か! どこまでお前はバカなんだ!? いや、参加者の中に、確かにウマシカに乗ってたヤツは何人も見かけたけども! どこまでも救いようがないウマシカの生態に、もうなんて言葉にすればいいのか分からないでいると、司会は無駄に苦々しい声で言う。『何ということでしょう... 。 レースが始まる前に、走ることのできない選手がすでに20人... 』 ウマシカの参加率高いな!? そりゃあウマシカのスペックは高いだろうけど、それ以前の問題だよね!? 心の中で、怒涛の勢いでツッコミを続ける俺。 俺、この世界に来てから、ツッコミしかしてない気がする。 そんなわけないんだが、そう思ってしまうのも無理はないだろう。 げんなりした気分でいると、ルルネが涎を垂らしながら言う。『今夜の食卓には、馬刺しが多く出そうですね! 』 ルルネさん。 それ、冗談にしては笑えないっす。『まあ、彼らの馬には同情しますが、レースを止めるわけにはいきません! みなさん、気を取り直して、レースを頑張ってください! 』 ルルネとくだらないやり取りをしていると、司会がさっきの空気を吹き飛ばすようにそう告げた。 そんなくだらない出来事もあったが、他の参加者たちも無事、スタートラインまで移動した。『みなさん、もうスタートの位置につきましたね? では、カウントを始めます! 3! 』 よし、どうやらレースがスタートするみたいだ。 なんか、スタートするまでにやけに時間がかかった気もするが、今はレースに集中するとしよう。『2! 』 カウントが減っていくのを耳にしながら、ルルネに言う。「ルルネ。 それじゃあ、よろしく頼むぞ」『お任せください! 』 力強いルルネの返事に、これはいけるかもしれないと俺は思った。『1! 』 そうだよ。 ここまで無駄に自分のすごさを語ってきたんだ。 ルルネをただのロバだと思っちゃいかんだろう。 手綱をしっかりと握り、気持ちを引き締める。 さあ、俺たちのレースの―――。『スタァァァァアアアアアトッ! 』 ―――始まりだっ! 一斉にスタートする馬たち。 砂埃が舞い上がり、一瞬にして視界が悪くなる。 だが、残念だったな、参加者諸君! 俺のルルネは、颯爽とすべての馬を―――。「―――抜けないっ. 」『はぁ、はぁ、はぁ』 結果、ルルネは見事に予想を裏切ってくれました。 いや、逆に予想通りか? ルルネのスピードは、驚くほど遅く、瞬く間に他の馬たちに置き去りにされてしまった。 足音だって。 パッ... カ、パッ... カ。 な? 驚きの足音だろ?「ちょっとぉ ~? ルルネさ ~ ん? 最下位ですよ ~? ほら、本気を出さなきゃ. 」 まだだ。 まだ、ルルネの本気はこんなものじゃない...! と思い直し、そう声をかけてみる。 だが、ルルネの足取りは微塵も変わらなかった。 パッ... カ、パッ... カ。「あ、ダメだこれ」 一歩を踏みしめるまでの時間がヤベェ。 優勝どころか、5位入賞すら無理だね。 もはや諦め、もうどうにでもなれ! と思っていると、司会の声が聞こえる。『おっとぉ!? 誠一選手とルルネ選手のペアがまっっっったく進んでおりません! やはりロバではダメなんでしょうか!? あっという間に最下位です! 』 ダメなんです。『誠一選手たちがまだ、スタートラインでもたついている間に、もうトップ集団は半分を走り終えました! 』「速くね!? 」 もう半分!? 絶対5位入賞とか無理だろ! 他の馬の速さに驚いていると、ルルネが苦しそうな声を出す。『くっ... はぁ、はぁ』「おいおい、大丈夫か!? 無理すんなよ! お前が頑張り屋なのは分かったからさ. 」 そして、足が遅いことも分かったけどね。 そんな俺の気遣う声を受けたルルネは、苦しそうに、呟いた。『…… お... 腹... が... 』「え? お腹が? 」『…… お腹が... 空いた...! 』「草でも食ってろよぉぉぉぉおおおお. 」 思わず叫んでしまった。 いや、仕方がないでしょ。 まさか腹が減ってたの!? だから遅いわけ!? そんなわけないと思いつつも、一応訊いてみる。「おい、ルルネ。 ちなみに朝食の牧草は... 」『主様、私にそのような家畜同然の飯を食えと...!? 』「お前ロバだろぉぉぉぉおおおお? 」 何言っちゃってくれてんの!? 何で俺がおかしいことになってんの!?「ちょっ! 取りあえず、この地面にはいっぱい草が生えてんだから、それ食って腹を満たせ! お腹いっぱいなら走れるんだろ!? 」『私はもう、草のような何がおいしいんだか分からない、あんなモノ食べたくありません! 人間の食事、サイコー! 』「だから、お前はロバなんでしょぉぉぉぉおおおおお!? 」 いくら叫んでも、ルルネは地面に生えている草を食べようとしない。 バハムートのことを持ち出して、何とか草を食べさせようとしたが、それでも食べないことを考えると、死んでも人間が食べるようなもの以外は口にしなさそうである。 動物に、人間の食べ物あげるんじゃなかった。 と、俺は今さらながら、強く後悔した。「くっ! このまま何もできずに負けるとか、カッコ悪すぎる...! 何か、俺の手持ちで食えるものは...!? 」 必死にアイテムボックスの中身を探してみるが、どれも調理されていない生の食材ばかりで、そのまま食べられそうなモノはなかった。 ああ、完全に終わった... 。 そう、諦めかけたときだった。「…… ん? 」 アイテムボックスの中にある、とあるモノに目が留まる。 それは―――【進化の実栽培セット】だった。 たしか、この中身は、進化の実を栽培する方法と、進化の実の種などが入っているって言ってたけど... 。「もしかして、進化の実も一個くらい入ってるんじゃ... 」 そんな淡い期待をしながら、【進化の実栽培セット】を取り出してみる。 すると、ズタ袋のようなモノが出現した。 中を見てみると、本当に進化の実を栽培するための方法が書かれた冊子と、進化の実が15個も入っていた。 ………… あれ?「進化の実が入ってて、種が入ってないぞ? 」 どれだけ中身を漁っても、進化の実はあるが、種らしきものは出てこなかった。 その事実に首を捻り、理由を考えていると、あることに気付いた。「…… あ。 そういえば... 進化の実を食べたとき、種が出てきたことなかったよな...? 」 そう、【果てなき悲愛の森】で進化の実を10個も食べた俺は、そのすべてを丸ごと食べていた。 つまり、種なんて見たこともない。 皮はついてるけどな。 ということは、この進化の実は、おそらく種実類と呼ばれるものなのだろう。 それこそ、この進化の実と似た見た目をしている、地球にあるアーモンドなんかは、まさに種実類と呼ばれるものである。 とはいえ、何とかルルネが食べてくれそうなモノを見つけることができた。 まあ、一応木の実だが、草じゃない分、まだ食べてくれるだろう。「ルルネ! コイツは食べられるか!? 」『そ、その木の実は...? 』 弱弱しい声で、ルルネはそう訊く。 つか、なんでそこまでして草を食べたくないんだよっ。「コイツは、俺が死にかけていたときや、サリアがピンチになったときに救ってくれた、【進化の実】だ」『進化の実...? 』「そうだ! コイツには、感謝してもしきれないほど、大きな恩がある。 それくらい、素晴らしい効果を持った木の実なんだ. 」『食べます! 』「復活早いな!? 」 俺の力説を聞き、ルルネは一瞬で俺から進化の実を一つとると、そのまま食べてしまった。『こ、これは...! 』「おい、どうかした―――」『不味いっ!! 驚くほどに不味いですね! 』「あ、なるほどね」 ルルネの、むしろ清々しいといった表情で不味いという姿は、俺も森で食べた進化の実の味を思い出させた。 うん、確かに不味かったなぁ... 。 だが、効果はすごい。『んん!? お、お腹が... いっぱいだと!? 』 そう、進化の実は、一つ食べればお腹がいっぱいになってしまうという、素晴らしい効果を持っていた。『主様! これなら... これならいけます! 』「よぉしっ! んじゃあ、頼むぜ. 」 改めて、復活したルルネの手綱を握り、気を引き締める。 まあ、また遅く走ることになる気もするけどな! そんなことを思っていると、ルルネが俺に訊いてくる。『主様、しっかり手綱は握られましたか? 』「ん? ああ、大丈夫だいつでも来い. 」 正直、そこまで本気で手綱は握っていない。 どうせ、そこまで危なくないだろうという、俺の楽観的な考えからだった。 だが、そんな楽観的な考えは、一瞬にして俺を恐怖させたのだった。『じゃあ―――参ります...! 』「おう! ―――へぁ!? 」 俺が返事をした直後、俺の体を浮遊感が襲う。 何が起きているのか理解できないでいると、次いですごい衝
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