「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」 ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすすり泣く音が響く。野次馬やら兵士達やらで人がごった返しているのだが、喧騒 dịch - 「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」 ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすすり泣く音が響く。野次馬やら兵士達やらで人がごった返しているのだが、喧騒 Việt làm thế nào để nói

「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」 ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすす


「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」

ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすすり泣く音が響く。野次馬やら兵士達やらで人がごった返しているのだが、喧騒など微塵もなく、妙に静まり返っていた。

それは、攫われたはずの海人族の女の子が天から降ってきた事や、人間であるはずの少年が空を跳びはねキャッチした事、更にその上空から少女を背に乗せた黒竜が降りてきた事も原因ではあるのだが、一番の理由は、その少年が盛大に海人族の少女を叱り付けたことだろう。いや、正確には、叱りつけた少年に対する先程から何度か聞こえる幼女の呼び名が原因かもしれない。

「ぐすっ、パパ、ごめんなしゃい……」
「もうあんな危ない事しないって約束できるか?」
「うん、しゅる」
「よし、ならいい。ほら、来な」
「パパぁー!」

片膝立ちで幼子にしっかり言い聞かせるハジメの姿と、叱られて泣きながらも素直に反省し、許されてハジメの胸元に飛び込むミュウの姿は……普通に親子だった。ミュウが連呼する“パパ”の呼び名の通りに。

攫われたはずの海人族の幼子が、単なる“慕う”を通り越して人間の少年を父親扱いしている事態に、そしてそれを受け入れてミュウを娘扱いしているハジメに、皆、意味が分からず唖然としている。内心は皆一緒だろう。すなわち、「これ、どうなってんの?」と。

ハジメがミュウを抱き上げて、よしよしと背中をポンポンしていると、漸く、周囲の人々も我を取り戻したようで盛大に騒ぎ始めた。

そんな周囲の困惑に満ちた喧騒を尻目に、ハジメがミュウをあやしていると背後からトンと抱きついてくる感触が……ハジメが肩越しに振り返ると、そこにはハジメの肩口に額を当てて小刻みに震える香織の姿があった。

「よかった……よかったよぉ~、ぐすっ」

今度は、香織が泣き出してしまった。気丈に振舞っていても、内心、死ぬほど不安だったのだろう。ハジメの生存を信じていたが、それでも心配な気持ちを感じなくなるわけではない。しかも、漸く再会できたというのに、すぐさま二度目の行方不明だ。相当堪えたに違いない。

「心配掛けて悪かった。この通り、ピンピンしてるよ。だから、泣くなよ……香織に泣かれるのは……色々困る」
「うっ、ひっぐ、じゃ、じゃあ、もう少しこのまま……」

ハジメは困ったように、肩越しに手を回して香織の頭をポンポンと撫でるのだが、香織は涙が止まらないのか、顔を見せないように益々ハジメの肩口に顔をうずめた。両手も後ろからハジメの腹部に回されギュッと締め付けている。

「おい、お前、一体どういうことか、せつッぷげらっ!?」
「むっ? すまぬ」

そんな中、先程、ハジメの跳躍の余波で吹き飛ばされ、海に落ちた隊長らしき人物が全身から水を滴らせつつ、空気を読まずハジメに詰め寄ろうとした。が、その後ろから小走りでハジメに駆け寄ったティオ(竜化は着地と同時に解いた)とぶつかってしまい、再び海に叩き落とされた。

大して気にもせず、ティオはハジメの傍に寄ると、その頭を抱き抱え自らの胸の谷間に押し付けた。

「ぬおっ!? おい、ティオ」
「信じておったよ? 信じておったが……やはり、こうして再会すると……しばし、時間をおくれ、ご主人様よ」

ハジメが僅かに胸の谷間から顔を覗かせティオの顔を見れば、大切なものが腕の中にあることを噛み締めるような表情をして、目の端に涙を溜めていた。今回は、ティオに頼って無茶もさせたので、仕方ないかと好きにさせるハジメ。

そうこうしているうちに、ミュウが「ミュウもギュ~する~」と言いながらハジメの首筋に抱きつき、いつの間にか傍に来ていたユエが側面から、シアが香織とは反対側の肩口に抱き付き始めた。

衆人環視の中、美幼女・美少女・美女を体が見えなくなるくらい全身に纏わりつかせたハジメ。周囲の視線が、困惑から次第に生暖かなものへと変わっていく。既に、殺気立っていた海人族の自警団達も人間族の兵士達も、毒気を抜かれたように武器を下げていた。

「貴様等……一度ならず、二度までも……王国兵士に対する公務妨害で捕縛してやろうか!」

再び桟橋から這い上がってきた隊長らしき人物が、怒りの形相でハジメ達を睨んだ。武器を手に、今にも襲いかかってきそうな勢いだ。一応、攫われた本人であるミュウが尋常でないくらい懐いていることから誘拐犯の可能性は余り考えていないようだが、それにしても理解不能な点が多すぎるので、しょっ引いて事情聴取をしたいのだろう。

ミュウに関しては、元より、中立商業都市フューレンのギルド支部長であるイルワからの正式な護送依頼であるので、ハジメも事情説明はするつもりだった。ただ、それを証明するものがなかったので困っていたわけだが、今は、それが手元にある。

ハジメは、ティオから“宝物庫”を返してもらうと、中からステータスプレートとイルワからの依頼書を取り出し、隊長に提示した。

「……なになに……“金”ランクだとっ!? しかも、フューレン支部長の指名依頼!?」

イルワの依頼書の他、事の経緯が書かれた手紙も提出した。これはエリセンの町長と目の前の駐在兵士のトップに宛てられたものだ。それを食い入るように読み進めた隊長は盛大に溜息を吐くと、少し逡巡したようだが、やがて諦めたように肩を落として敬礼をした。

「……依頼の完了を承認する。南雲殿」
「疑いが晴れたようで何よりだ。他にも色々聞きたいことはあるんだろうが、こっちはこっちで忙しい。というわけで何も聞かないでくれ……一先ず、この子と母親を会わせたい。いいよな?」
「もちろんだ。しかし、先程の竜の事や貴方の先程の跳躍、それにあの船らしきもの……王国兵士としては看過できない」

先程の高圧的な態度とは一転し、ハジメに対して一定の敬意を払った態度となった隊長は、それでも聞くべきことは見逃せないとハジメに強い眼差しで訴える。

「それなら、時間が出来たら話すってことでいいだろ? どっちにしろ暫くエリセンに滞在する予定だしな。もっとも、本国に報告しても無駄だと思うぞ。もう、ほとんど知ってるだろうし……」
「むっ、そうか。とにかく、話す機会があるならいい。その子を母親の元へ……その子は母親の状態を?」
「いや、まだ知らないが、問題ない。こっちには最高の薬も治癒師もいるからな」
「そうか、わかった。では、落ち着いたらまた、尋ねるとしよう」

隊長の男、最後にサルゼと名乗った彼は、そう言うと野次馬を散らして騒ぎの収拾に入った。中々、職務に忠実な人物である。

ミュウを知る者達が、声を掛けたそうにしていたが、そうすれば何時までたっても母親のところへたどり着けそうになかったので、ハジメは視線で制止した。

「パパ、パパ。お家に帰るの。ママが待ってるの! ママに会いたいの」
「そうだな……早く、会いに行こう」

ハジメの手を懸命に引っ張り、早く早く! と急かすミュウ。彼女にとっては、約二ヶ月ぶりの我が家と母親なのだ。無理もない。道中も、ハジメ達が構うので普段は笑っていたが、夜、寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。

ミュウの案内に従って彼女の家に向かう道中、顔を寄せて来た香織が不安そうな小声で尋ねる。

「ハジメくん。さっきの兵士さんとの話しって……」
「いや、命に関わるようなものじゃないらしい。ただ、怪我が酷いのと、後は、精神的なものだそうだ……精神の方はミュウがいれば問題ない。怪我の方は詳しく見てやってくれ」
「うん。任せて」

そんな会話をしていると、通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。

「レミア、落ち着くんだ! その足じゃ無理だ!」
「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから!」
「いやよ! ミュウが帰ってきたのでしょう!? なら、私が行かないと! 迎えに行ってあげないと!」

どうやら、家を飛び出そうとしている女性を、数人の男女が抑えているようである。おそらく、知り合いがミュウの帰還を母親に伝えたのだろう。

そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア! と輝かせた。そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。

「ママーー!!」
「ッ!? ミュウ!? ミュウ!」

ミュウは、ステテテテー! と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性――母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。

もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。

レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か。

娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。

「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」
「ミュウ……」

まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。

ミュウは、真っ直ぐレミアを見つめており、その瞳には確かに、レミアを気遣う気持ちが宿っていた。攫われる前は、人一倍甘えん坊で寂しがり屋だった娘が、自分の方が遥かに辛い思いをしたはずなのに、再会して直ぐに自分のことより母親に心を砕いている。

驚いて思わずマジマジとミュウを見つめるレミアに、ミュウは、ニッコリと笑うと、今度は自分からレミアを抱きしめた。体に、あるいは心に酷い傷でも負っているのではないかと眠れぬ夜を過ごしながら、自分は心配の余り心を病みかけていたというのに、娘はむしろ成長して帰って来たように見える。

その事実に、レミアは、つい苦笑いをこぼした。肩の力が抜け、涙も止まり、その瞳には、ただただ娘への愛おしさが宿っている。

再び抱きしめ合ったミュウとレミアだったが、突如、ミュウが悲鳴じみた声を上げた。

「ママ! あし! どうしたの! けがしたの!? いたいの!?」

どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。

これが、サルゼが言っていたことであり、エリセンに来る道中でハジメが青年から聞いていたことだ。ミュウを攫ったこともだが、母親であるレミアに歩けなくなる程の重傷を負わせたことも、海人族達があれ程殺気立っていた理由の一つだったのだ。

ミュウは、レミアとはぐれた際に攫われたと言っていたが、海人族側からすれば目撃者がいないなら誘拐とは断定できないはずであり、彼等がそう断言していたのは、レミアが実際に犯人と遭遇したからなのだ。

レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで砂浜の足跡を消している怪しげな男達を発見した。嫌な予感がしたものの、取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ……男は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。

レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。

しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。

一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。

そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態な
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「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」 ボロボロになった桟橋の近くで、幼い少女のすすり泣く音が響く。野次馬やら兵士達やらで人がごった返しているのだが、喧騒など微塵もなく、妙に静まり返っていた。 それは、攫われたはずの海人族の女の子が天から降ってきた事や、人間であるはずの少年が空を跳びはねキャッチした事、更にその上空から少女を背に乗せた黒竜が降りてきた事も原因ではあるのだが、一番の理由は、その少年が盛大に海人族の少女を叱り付けたことだろう。いや、正確には、叱りつけた少年に対する先程から何度か聞こえる幼女の呼び名が原因かもしれない。「ぐすっ、パパ、ごめんなしゃい... 」「もうあんな危ない事しないって約束できるか? 」「うん、しゅる」「よし、ならいい。ほら、来な」「パパぁー! 」 片膝立ちで幼子にしっかり言い聞かせるハジメの姿と、叱られて泣きながらも素直に反省し、許されてハジメの胸元に飛び込むミュウの姿は...普通に親子だった。ミュウが連呼する "パパ" の呼び名の通りに。 攫われたはずの海人族の幼子が、単なる "慕う" を通り越して人間の少年を父親扱いしている事態に、そしてそれを受け入れてミュウを娘扱いしているハジメに、皆、意味が分からず唖然としている。内心は皆一緒だろう。すなわち、「これ、どうなってんの? 」と。 ハジメがミュウを抱き上げて、よしよしと背中をポンポンしていると、漸く、周囲の人々も我を取り戻したようで盛大に騒ぎ始めた。 そんな周囲の困惑に満ちた喧騒を尻目に、ハジメがミュウをあやしていると背後からトンと抱きついてくる感触が...ハジメが肩越しに振り返ると、そこにはハジメの肩口に額を当てて小刻みに震える香織の姿があった。「よかった...よかったよぉ ~ 、ぐすっ」 今度は、香織が泣き出してしまった。気丈に振舞っていても、内心、死ぬほど不安だったのだろう。ハジメの生存を信じていたが、それでも心配な気持ちを感じなくなるわけではない。しかも、漸く再会できたというのに、すぐさま二度目の行方不明だ。相当堪えたに違いない。「心配掛けて悪かった。この通り、ピンピンしてるよ。だから、泣くなよ...香織に泣かれるのは...色々困る」「うっ、ひっぐ、じゃ、じゃあ、もう少しこのまま... 」 ハジメは困ったように、肩越しに手を回して香織の頭をポンポンと撫でるのだが、香織は涙が止まらないのか、顔を見せないように益々ハジメの肩口に顔をうずめた。両手も後ろからハジメの腹部に回されギュッと締め付けている。「おい、お前、一体どういうことか、せつッぷげらっ!? 」「むっ? すまぬ」 そんな中、先程、ハジメの跳躍の余波で吹き飛ばされ、海に落ちた隊長らしき人物が全身から水を滴らせつつ、空気を読まずハジメに詰め寄ろうとした。が、その後ろから小走りでハジメに駆け寄ったティオ (竜化は着地と同時に解いた) とぶつかってしまい、再び海に叩き落とされた。 大して気にもせず、ティオはハジメの傍に寄ると、その頭を抱き抱え自らの胸の谷間に押し付けた。「ぬおっ!? おい、ティオ」「信じておったよ? 信じておったが...やはり、こうして再会すると...しばし、時間をおくれ、ご主人様よ」 ハジメが僅かに胸の谷間から顔を覗かせティオの顔を見れば、大切なものが腕の中にあることを噛み締めるような表情をして、目の端に涙を溜めていた。今回は、ティオに頼って無茶もさせたので、仕方ないかと好きにさせるハジメ。 そうこうしているうちに、ミュウが「ミュウもギュ ~ する ~ 」と言いながらハジメの首筋に抱きつき、いつの間にか傍に来ていたユエが側面から、シアが香織とは反対側の肩口に抱き付き始めた。 衆人環視の中、美幼女・美少女・美女を体が見えなくなるくらい全身に纏わりつかせたハジメ。周囲の視線が、困惑から次第に生暖かなものへと変わっていく。既に、殺気立っていた海人族の自警団達も人間族の兵士達も、毒気を抜かれたように武器を下げていた。「貴様等...一度ならず、二度までも...王国兵士に対する公務妨害で捕縛してやろうか! 」 再び桟橋から這い上がってきた隊長らしき人物が、怒りの形相でハジメ達を睨んだ。武器を手に、今にも襲いかかってきそうな勢いだ。一応、攫われた本人であるミュウが尋常でないくらい懐いていることから誘拐犯の可能性は余り考えていないようだが、それにしても理解不能な点が多すぎるので、しょっ引いて事情聴取をしたいのだろう。 ミュウに関しては、元より、中立商業都市フューレンのギルド支部長であるイルワからの正式な護送依頼であるので、ハジメも事情説明はするつもりだった。ただ、それを証明するものがなかったので困っていたわけだが、今は、それが手元にある。 ハジメは、ティオから "宝物庫" を返してもらうと、中からステータスプレートとイルワからの依頼書を取り出し、隊長に提示した。「……なになに... "金" ランクだとっ!? しかも、フューレン支部長の指名依頼!? 」 イルワの依頼書の他、事の経緯が書かれた手紙も提出した。これはエリセンの町長と目の前の駐在兵士のトップに宛てられたものだ。それを食い入るように読み進めた隊長は盛大に溜息を吐くと、少し逡巡したようだが、やがて諦めたように肩を落として敬礼をした。「……依頼の完了を承認する。南雲殿」「疑いが晴れたようで何よりだ。他にも色々聞きたいことはあるんだろうが、こっちはこっちで忙しい。というわけで何も聞かないでくれ...一先ず、この子と母親を会わせたい。いいよな? 」「もちろんだ。しかし、先程の竜の事や貴方の先程の跳躍、それにあの船らしきもの...王国兵士としては看過できない」 先程の高圧的な態度とは一転し、ハジメに対して一定の敬意を払った態度となった隊長は、それでも聞くべきことは見逃せないとハジメに強い眼差しで訴える。「それなら、時間が出来たら話すってことでいいだろ? どっちにしろ暫くエリセンに滞在する予定だしな。もっとも、本国に報告しても無駄だと思うぞ。もう、ほとんど知ってるだろうし... 」「むっ、そうか。とにかく、話す機会があるならいい。その子を母親の元へ...その子は母親の状態を? 」「いや、まだ知らないが、問題ない。こっちには最高の薬も治癒師もいるからな」「そうか、わかった。では、落ち着いたらまた、尋ねるとしよう」 隊長の男、最後にサルゼと名乗った彼は、そう言うと野次馬を散らして騒ぎの収拾に入った。中々、職務に忠実な人物である。 ミュウを知る者達が、声を掛けたそうにしていたが、そうすれば何時までたっても母親のところへたどり着けそうになかったので、ハジメは視線で制止した。「パパ、パパ。お家に帰るの。ママが待ってるの! ママに会いたいの」「そうだな...早く、会いに行こう」 ハジメの手を懸命に引っ張り、早く早く! と急かすミュウ。彼女にとっては、約二ヶ月ぶりの我が家と母親なのだ。無理もない。道中も、ハジメ達が構うので普段は笑っていたが、夜、寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。 ミュウの案内に従って彼女の家に向かう道中、顔を寄せて来た香織が不安そうな小声で尋ねる。「ハジメくん。さっきの兵士さんとの話しって... 」「いや、命に関わるようなものじゃないらしい。ただ、怪我が酷いのと、後は、精神的なものだそうだ...精神の方はミュウがいれば問題ない。怪我の方は詳しく見てやってくれ」「うん。任せて」 そんな会話をしていると、通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。「レミア、落ち着くんだ! その足じゃ無理だ! 」「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから! 」「いやよ! ミュウが帰ってきたのでしょう!? なら、私が行かないと! 迎えに行ってあげないと! 」 どうやら、家を飛び出そうとしている女性を、数人の男女が抑えているようである。おそらく、知り合いがミュウの帰還を母親に伝えたのだろう。 そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア! と輝かせた。そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。「ママーー!! 」「ッ!? ミュウ? ミュウ! 」 ミュウは、ステテテテー! と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性――母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。 もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。 レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か。 娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」「ミュウ... 」 まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。 ミュウは、真っ直ぐレミアを見つめており、その瞳には確かに、レミアを気遣う気持ちが宿っていた。攫われる前は、人一倍甘えん坊で寂しがり屋だった娘が、自分の方が遥かに辛い思いをしたはずなのに、再会して直ぐに自分のことより母親に心を砕いている。 驚いて思わずマジマジとミュウを見つめるレミアに、ミュウは、ニッコリと笑うと、今度は自分からレミアを抱きしめた。体に、あるいは心に酷い傷でも負っているのではないかと眠れぬ夜を過ごしながら、自分は心配の余り心を病みかけていたというのに、娘はむしろ成長して帰って来たように見える。 その事実に、レミアは、つい苦笑いをこぼした。肩の力が抜け、涙も止まり、その瞳には、ただただ娘への愛おしさが宿っている。 再び抱きしめ合ったミュウとレミアだったが、突如、ミュウが悲鳴じみた声を上げた。「ママ! あし! どうしたの! けがしたの!? いたいの!? 」 どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。 これが、サルゼが言っていたことであり、エリセンに来る道中でハジメが青年から聞いていたことだ。ミュウを攫ったこともだが、母親であるレミアに歩けなくなる程の重傷を負わせたことも、海人族達があれ程殺気立っていた理由の一つだったのだ。 ミュウは、レミアとはぐれた際に攫われたと言っていたが、海人族側からすれば目撃者がいないなら誘拐とは断定できないはずであり、彼等がそう断言していたのは、レミアが実際に犯人と遭遇したからなのだ。 レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで砂浜の足跡を消している怪しげな男達を発見した。嫌な予感がしたものの、取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ...男は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。 レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。 しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。 一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。 そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態な
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